生物多様性について

木村秋則さんからお誘いを受けたので、この場所で、私もブログを書かせていただこうと思う。私には、個人のブログ(「クオリア日記」 )もすでにあるので、ここでは、主に、生物多様性について思うことを書かせていただこうと思う。

(一)

環境の中で、さまざまな生物がお互いに関わりながら生態系をつくる。

そのような生命のあり方が大切だということは、子どもの頃からの経験で身体にしみついている。

小学校に上がる前に母親が大学で昆虫学を専攻している人を紹介してくれて、本格的に蝶を採り始めた。「日本鱗翅学会」の大会や支部の集まりに顔を出して、ほんの少し背伸びをしたりもした。

ネットを持って森や野原に立っているという時間を、随分過ごした。そんな中で、飛んでくる蝶の種類がいやでも気になる。どんな場所に、どんな蝶がいるのか体験を重ねていった。

蝶を見ていると、環境の多様性が大切だということが身にしみてくる。

蝶にはそれぞれ幼虫が食べる「食草」というものがあって、その回りを飛ぶことも多い。例えば、カナムグラの上には、キタテハがよく飛んでいる。クスノキの周囲にはアオスジアゲハが飛んでいる。

その場所に、どのような植生があるか。そのことによって、飛んでいる蝶が変わってくるということは、子どもの私にとってたちまち「常識」となった。ただ単に、「緑」があればよい、というわけではないのである。

木々の真っ直中というのは案外蝶が少ないもので、林間の開けた草むらにたくさんの蝶がやってくる。そんな場所には、陽光を受けて花が咲いている。花によって、やってくる蝶が違う。ツツジの花にはアゲハ類が多いし、ヒメジオンにはルリシジミやヤマトシジミなどの青いシジミチョウがよく群がっていた。

蝶の中には、変わり者もいた。白いウラバネの中に黒い点が散在しているゴイシシジミは、幼虫がササに着くアブラムシを食べる。そのためか、個体数の変動が大きい。

5歳で蝶の採集を始めて、ゴイシシジミを初めて見たのは小学校3年の時だった。それまでの四年間、全く見たことがなかった。

私に蝶を教えて下さった伊藤さんは、「ゴイシシジミは不思議なんだよ」と言った。私と一緒にネットで笹の葉を叩きながら、ひとりごとのようにつぶやいた。

「何年も姿を見せないと思うと、突然大量に発生する。なぜそうなっているのか、よくわからないんだ。」

自分に言い聞かせるような伊藤さんの声の響きに、幼い私は、自然の深遠を見たような気がした。

ゴイシシジミの幼虫が育つためには、エサとなるアブラムシが必要である。アブラムシは笹につく。笹が育つには、日照や水はけなど、特定の環境が必要である。そのような条件が整うためには・・・。

ネットを持って神社の森を歩き、畑のヘリをさ迷う。そんな時間を重ねていくうちに、生きものというものが気が遠くなるような連鎖の中に育まれているということを、教科書や先生に教わるまでもなく学んでいった。

人間もまた同じように、生態系の中に息づく存在であるはず。そんな「気づき」が、私の中に育まれていったのである。